頭の中身

突然この男が俺に向かって心底不幸せそうなため息を吐いて見せたので、こいつは俺に喧嘩を売っているのかと俺は眉根にしわを寄せた。
いくら犯罪者といえども俺が不機嫌になったことはわかったらしく、フリッカロッタは肩をすくめて俺を見る。

「なんだよ」
「んー…別に」

口ではそう言いつつも俺から目をそらさないままのフリッカの考えていることは、俺にはさっぱり分からなくて、
どうせ俺にはこの男の考えていることなんてわからないし、あんまり分かりたくない気もしなくもないのだが、
でもここでそんな風に適当にはぐらかされてしまうのも何だか俺が軽くあしらわれているような気がしてきてしまって
口に出してしまったら負けのような気がしていたのに、結局俺は肩をすくめてため息をついた。

「気になるだろ」

俺が小さくそう言うなり、フリッカは一瞬眉を上げて、それから突然笑いだした。
やっぱりこいつは何を考えているのかさっぱりだ、ぎょっとした俺が目を丸くしていると、
フリッカは俺の頬に手を寄せて、それからまた小さく笑いながら言った

「お前ってほんとにかわいいなァ」

な、何言ってんだお前!そう叫ぶ間もなく目を見開いた俺が慌てて目の前の男から距離を置こうとしても、
反射的に一歩下がった俺の腕はもうすでにフリッカに捕えられていて、
そのまま無防備にのばされた手の甲には口付けが落とされる
何が何だか分からないまま、慌ててその手をひっこめたときにはフリッカはもう満足げにいつものニヤニヤ顔をさらしているばかりで、
ちくしょう、やっぱりこいつの頭の中はさっぱり理解できない、!!!
俺は半分泣きそうになりながらくるりとその男に背中を向けると、一目散に駆けだした。