ドスッ、という効果音がふさわしい程の重たい衝撃が、突然俺の後頭部を襲った
痛さに顔をしかめながらも慌てて振り向けば、そこに可愛げもなく突っ立っているのは見慣れた愛らしいお姿、
あぁ、お嬢、こんなとこにいたの。
「探してたんだぜお嬢、どこで何してたの?」
痛む後頭部をさすりつつ、俺はやんわりと彼女に言った
俺の愛する女王様は鋭い目つきのまま腹立たしげに俺を睨みつけて、それからチッと荒い舌打ちをする
いつもの御挨拶だ、ご機嫌斜め。
俺は誰に見せるでもなく肩をすくめて、それから背中を向けた彼女の方へ歩み寄った
「痛々しいねェ、返り血が飛んでるぜ」
彼女の頬についた赤をぬぐおうと指を伸ばせば、その手さえ思い切りはねのけられた
普段なら触んじゃねェ!!とか何とか怒鳴って思い切り怒りをあらわにする癖に、
クインは俺に背を向けたまま動かない
こういうときだけ大人しい彼女の背中はとてつもなく愛おしく思えてしまって、
俺は信じたくもねェ親心というやつに押し負けた溜息を吐きだしてからおもう、
こりゃあまァ、まいったね。
クインはどこ見てんだか分からねェうつろな目で、それでも空をじっと見つめていて
「あいつにフラれた?」
わずかにクインの目が細められて、それからうるせェ、とちっちゃな罵声が床に落っこちる
あーあ、俺は頭を抱えたくなりながらも彼女のその小さな肩に手を置く
この娘は本当に純粋にあいつを愛してやがるから厄介だ。
その愛は純粋すぎるがゆえに、お互いを傷つけているのにまるで気づきゃしねェ
ぽんぽん、と叩いた背中は相変わらずちっちゃいままで、俺は柄にもなくなんだかどうしようもない不安を覚えて
「なァ、大人しく俺にしとけよエディー」
無意識のまま吐いた溜息に似たその台詞は、王女様の頭をちいさく揺らした