#感想

『落下の解剖学』(2023)みた 

賛否両論あるみたい。私は楽しかった。ミステリーかと思ってたけど法廷劇だった。序盤は主人公目の視線で進むものの、法廷が始まると見えていなかった情報が徐々に明かされていき、事件を客観視できるようになっている。証言が重なるごとに主人公の見え方がガラッと変わるのが面白かった…。

事件が起こったときのことは何も映されないので、他殺か自殺かの判断を観客も迷える。最初はもちろん事故でしょ?!と思っていたけど…本当は殺しちゃったの?でも自殺もありえそう…と毎回違う心象にさせてくれる説得力のあるセリフと構成になっているとおもった。検察の横暴な誘導尋問に追い詰められたサンドラが苛立ったり、脈絡のない話をしちゃうところも演技力に魅せられた。法廷エンタメだな〜。

サンドラは無実を主張するけど、事件の映像は最後まで流れず、彼女のアリバイも、逆に決定打と言えるような証拠もない。真実は誰にもわからない、という構図は、実際の事件や裁判とも同じなんだろうなと思えるリアリティがあった。誰も「お前がやったんだろ?」とは言わないけど、私は彼女が殺したのかもしれないと思いながら見てた…絶妙だ…。

事件前の2人がどういう人間だったか、という部分がわかる大喧嘩のシーンもよかった。サミュエルの「スヌープも疲れて動けなくなるかも」というセリフも好きだった。犬も可愛い。ラスト、スヌープがサンドラに寄り添う姿がいなくなったサミュエルと重なって切なかった…。サミュエルとそうだったように、家族って愛しててもぶつかったり苛立ったりすることはある。でも次は、次は大事にしてやってくれ…と思わずにはいられないエンドだ…。▲CLOSE