#感想 リンクラベル... 「戦う操縦士」サン=テグジュペリ 読了〜 すごかった… ▼MORE「星の王子さま」のあとがきを読んで、サン=テグジュペリの人生に興味を持ったので読んでみました。 彼は本物の飛行機乗りで、「星の王子さま」を書いた後は戦争で飛行機に乗ったまま消息不明になったんだよね。なんだか砂漠で消えた王子さまと重なってしまって…。あと本職パイロットで勲章を授与されるほどの軍人と、あんな不思議であたたかい、普遍的なメッセージのあるお話を書いた人の印象が、なんかすごく振り幅がでかいな…と思ったんだよな…。 話は戦記物だけど、かなり読みやすい! エッセイみたいなテイストで、難しいところもあるけどぐいぐい引き込まれて一気に読んじゃった。 サン=テグジュペリが第二次世界大戦初期に偵察機に乗ってたときのお話。こんな任務完全に無意味だし無茶苦茶だし絶対死ぬ…って思いながらも「はい、わかりました」と言って出撃するアントワーヌ(・サン=テグジュペリ)大尉。死場所になるであろう空へ向かうための装備をひとつひとつ身につける間は当然憂鬱で、イラついて…。自分はなぜ戦うのかを考える…。 上空から見えるフランスの村、逃げる人々、機能しなくなった畑や井戸、自分の乗っている機体を狙う敵の砲撃の様子、同じ二/三三大隊の、残り少なくなった仲間たちのこと、小さい頃の自分の思い出…。大尉は空からいろんなものを見て、いろんなことを考えながら任務地へ向かう。その中に大尉が人々を思う気持ちや、仲間の行動や生活に対するあたたかな眼差しも描かれている。戦争と人間の生活って一緒なんだよなっておもった…。 いまは世界中で分断が進んでいるけど、サン=テグジュペリは精神と連帯と責任の話をしている。今まで「責任」っていう言葉が強迫的な観念に思えて苦手だったけど、サン=テグジュペリがいう「責任」ということばは、「星の王子さま」でいうところの「自分が手間ひまをかけてお世話するものにこそつながりや愛が生まれる」っていう意味なんだよね。王子さまはバラをめんどくさく思って星から逃げちゃうけど、最後には、特別なかけがえのない友達である彼女のために、星に帰ることを選ぶ。 フランスが第二次世界大戦に参戦する前、ドイツ軍がポーランドやノルウェーに侵攻した時、サン=テグジュペリの所属する二/三三大隊は義勇軍として北欧の国を守ったらしい。 われわれの将兵が死地に赴くのを漠然と受け入れているのは、北欧の国が醸し出すクリスマスの風味のようなもののためではないか、私にはいつもそんな風に思われた。それを救うことが、自分たちの生命を犠牲にする十分な理由に感じられていたのだろう。 もしもフランスが世界にとってクリスマスのような存在であったら、世界はフランスを救うことで自らも救ったことだろう。 世界における人間の精神的共同体は、われわれに味方してはくれなかった。しかし、そのような共同体を世界のなかに築きあげることによって、われわれは世界を、そしてわれわれ自身を救うことだってできたはずだ。だがその勤めを怠ってしまったのだ。 今日の出撃の際、私は与える前にまず受け取ろうとしていた。だがその望みは虚しかった。(略)受け取る前にまず与えなければならない。−−住む前にまず建設しなければならない。 これすごいな…いろいろ時代背景もあるんだろうけど、びっくりしちゃった。正直、「クリスマスの風味?そんなことで命を…?」と思ったけど、でもよく考えたらそういうことだよな…。国土が繋がっているヨーロッパでの連帯の意思は、島国である日本とは全く違うんだろう。当然みんなで防衛しなくちゃいけないという意識があるんだろう。その前提で、他の国のために自分の命をかけることに納得する材料として、「クリスマスを救おう」がある…。なんかふわっとしてるっていうか…でもめちゃくちゃ強いっていうか…。よくわかんないけど、でもわかる。気づかないうちに心の奥にあるものだ。そういうふうにわかったら、涙が出ちゃった。 当時のフランスは敗北に次ぐ敗北で、二/三三大隊も撤退続き。一緒に戦ってくれない他の国を恨んだりもする。ポーランドに侵攻を始めたドイツに「やめろ」と宣戦布告したのは、フランスとイギリスだけだったから。それでもサン=テグジュペリは結局、「受け取る前にまず与えなければならないんだ」と言う。 個人的には、結局戦争が始まらないことが一番大事だと思う。どんなに熱い想いがあっても戦争は人を殺すことだ。でも侵攻されたら抵抗するのは普通だとも思う。だって侵攻するのが100%悪いじゃん…。サン=テグジュペリの隊は偵察隊なので、爆撃されることはあっても爆撃することはない。そしてこの本の中で、フランスは負け続けている。お互いに犠牲を出しながら戦争は続く。その中で、サン=テグジュペリは敗北とは何か、勝利とは何か、自分たちは本当に負けているのか、と考え続ける。 ウクライナの人たちのこと、パレスチナの人たちのこと、今もなお抵抗し続け戦っている人々のことを思う。できる範囲で何かしないと、なくなってしまう危機にある文化のこと。私が与えられるかもしれないもののこと…。 「星の王子さま」を読んだときに、サン=テグジュペリって何者なんだよ…と思ったけど、やっぱりただものではないな…戦争の渦中でそんなこと思える? 「星の王子さま」は世界中でいろんな子供たちが、大人になってからも多分読む本だ。文化というのは歴史によってできていくんだよなあと当たり前のことを改めて思う。歴史を作るのは、人間の想いなんだってことも……。▲CLOSE 2025/04/16 Day
リンクラベル...
「戦う操縦士」サン=テグジュペリ
読了〜 すごかった…
「星の王子さま」のあとがきを読んで、サン=テグジュペリの人生に興味を持ったので読んでみました。
彼は本物の飛行機乗りで、「星の王子さま」を書いた後は戦争で飛行機に乗ったまま消息不明になったんだよね。なんだか砂漠で消えた王子さまと重なってしまって…。あと本職パイロットで勲章を授与されるほどの軍人と、あんな不思議であたたかい、普遍的なメッセージのあるお話を書いた人の印象が、なんかすごく振り幅がでかいな…と思ったんだよな…。
話は戦記物だけど、かなり読みやすい! エッセイみたいなテイストで、難しいところもあるけどぐいぐい引き込まれて一気に読んじゃった。
サン=テグジュペリが第二次世界大戦初期に偵察機に乗ってたときのお話。こんな任務完全に無意味だし無茶苦茶だし絶対死ぬ…って思いながらも「はい、わかりました」と言って出撃するアントワーヌ(・サン=テグジュペリ)大尉。死場所になるであろう空へ向かうための装備をひとつひとつ身につける間は当然憂鬱で、イラついて…。自分はなぜ戦うのかを考える…。
上空から見えるフランスの村、逃げる人々、機能しなくなった畑や井戸、自分の乗っている機体を狙う敵の砲撃の様子、同じ二/三三大隊の、残り少なくなった仲間たちのこと、小さい頃の自分の思い出…。大尉は空からいろんなものを見て、いろんなことを考えながら任務地へ向かう。その中に大尉が人々を思う気持ちや、仲間の行動や生活に対するあたたかな眼差しも描かれている。戦争と人間の生活って一緒なんだよなっておもった…。
いまは世界中で分断が進んでいるけど、サン=テグジュペリは精神と連帯と責任の話をしている。今まで「責任」っていう言葉が強迫的な観念に思えて苦手だったけど、サン=テグジュペリがいう「責任」ということばは、「星の王子さま」でいうところの「自分が手間ひまをかけてお世話するものにこそつながりや愛が生まれる」っていう意味なんだよね。王子さまはバラをめんどくさく思って星から逃げちゃうけど、最後には、特別なかけがえのない友達である彼女のために、星に帰ることを選ぶ。
フランスが第二次世界大戦に参戦する前、ドイツ軍がポーランドやノルウェーに侵攻した時、サン=テグジュペリの所属する二/三三大隊は義勇軍として北欧の国を守ったらしい。
これすごいな…いろいろ時代背景もあるんだろうけど、びっくりしちゃった。正直、「クリスマスの風味?そんなことで命を…?」と思ったけど、でもよく考えたらそういうことだよな…。国土が繋がっているヨーロッパでの連帯の意思は、島国である日本とは全く違うんだろう。当然みんなで防衛しなくちゃいけないという意識があるんだろう。その前提で、他の国のために自分の命をかけることに納得する材料として、「クリスマスを救おう」がある…。なんかふわっとしてるっていうか…でもめちゃくちゃ強いっていうか…。よくわかんないけど、でもわかる。気づかないうちに心の奥にあるものだ。そういうふうにわかったら、涙が出ちゃった。
当時のフランスは敗北に次ぐ敗北で、二/三三大隊も撤退続き。一緒に戦ってくれない他の国を恨んだりもする。ポーランドに侵攻を始めたドイツに「やめろ」と宣戦布告したのは、フランスとイギリスだけだったから。それでもサン=テグジュペリは結局、「受け取る前にまず与えなければならないんだ」と言う。
個人的には、結局戦争が始まらないことが一番大事だと思う。どんなに熱い想いがあっても戦争は人を殺すことだ。でも侵攻されたら抵抗するのは普通だとも思う。だって侵攻するのが100%悪いじゃん…。サン=テグジュペリの隊は偵察隊なので、爆撃されることはあっても爆撃することはない。そしてこの本の中で、フランスは負け続けている。お互いに犠牲を出しながら戦争は続く。その中で、サン=テグジュペリは敗北とは何か、勝利とは何か、自分たちは本当に負けているのか、と考え続ける。
ウクライナの人たちのこと、パレスチナの人たちのこと、今もなお抵抗し続け戦っている人々のことを思う。できる範囲で何かしないと、なくなってしまう危機にある文化のこと。私が与えられるかもしれないもののこと…。
「星の王子さま」を読んだときに、サン=テグジュペリって何者なんだよ…と思ったけど、やっぱりただものではないな…戦争の渦中でそんなこと思える?
「星の王子さま」は世界中でいろんな子供たちが、大人になってからも多分読む本だ。文化というのは歴史によってできていくんだよなあと当たり前のことを改めて思う。歴史を作るのは、人間の想いなんだってことも……。▲CLOSE